幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設
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勝負

黎翔×夕鈴(偽夫婦)

 
「あのー、陛下?」
国王陛下から寵愛を受ける唯一の花嫁は、夫(仮)を見上げて恐る恐る声をかけてみた。
「何、夕鈴?」
一応呼ぶ声に応えてくれる、けれど目的の人物は目の前に広げられている書面から目を離さない。それが悔しくて夕鈴は思わず声を荒げた。
「さっきから何度もお願いしてますけど、降ろして下さいっ」
「やだ」
(ああもう!)
また一蹴されてしまった。しかも今度は駄々っ子のような短い一言で。

今、夕鈴が座っているのはいつもの長椅子ではなく、黎翔の膝の上だった。

――黎翔はほんの数刻前に妃の部屋にやって来た。
侍女たちを下がらせた後の彼の第一声は、「ごめんね。ちょっとこっちで仕事の続きしてもいい?」
ふと手元を見ると、確かにいくつかの書簡を抱えていた。黎翔が後宮に仕事を持ち込むなんて珍しい。
だから、そんな黎翔の邪魔をしないように長椅子に座って、老師から借りた書物の続きを読もうと考えた。
夕鈴は本を手に取り長椅子に向かおうとすると、背後に注がれる視線を感じ取った。
振り向くといつのまにか書簡をすでに机に置いたらしい黎翔が立っていたのだ。
『あれ、陛下、お仕事は?』
そう尋ねる前に体を引き寄せられ、油断していた夕鈴は黎翔のされるがままに動き、果てに着地した先は長椅子ではなかった。

……静まり返った空気がいたたまれない。
ずっと閉じていた目をゆっくり開けると、頭の上に黎翔の顔。傍にいないと感じることのできない、ほのかに着物から漂うお香の匂い。しまいには夕鈴が逃げないように書簡を掴む両手で四方を囲まれる。
そんな夕鈴の体勢は――いわゆる、お姫様抱っこ状態。
当初は膝の上でジタバタしていたのに構わず、なかなか降ろしてくれない。
でもやっぱり恥ずかしさに耐えられなくて一刻に一度ほど抗議をするが拒否ばかりで、まともに取り合ってもらえない。この攻防は今のところ5戦0勝5敗目を記録してしまった。
しかし、負けてはいられない。解放してもらわないと、恥ずかしくて身が持たない。
すぅ、と夕鈴は深呼吸する。そして挑む6戦目――

「陛下、いい加減降ろして下さい!」
「いやだ」
(ぐっ……また!)
夕鈴は諦めずに食いかかった。
「やだって、これじゃ私、お仕事の邪魔してるだけじゃないですかっ! ていうかお仕事あるならわざわざ後宮に寄らなくても……!」
「私の部屋では仕事に打ち込めない。君の顔を見ながらならば集中できる。政務室通いが良い例だろう? 君が来てから仕事の効率が上がった」
くすり、やっと向けられた瞳は狼陛下だった。
狼とはまだ目を合わせられないので思わず、目を、顔をぱっと逸らす。
(何を言っているの、この人は!)
仮にも国王陛下が妃の顔を見ないと仕事に集中できないというのはおかしい話だ。
(陛下なら、たとえ1人でも仕事できるでしょうが! 私がここに来る前は1人だったはずなんだから……)
心の声が漏れていたのだろうか。黎翔は夕鈴が内に秘めていた疑問に応えた。
「分からないか? 君の存在は私の癒しであり、褒美だ」
「ほ、うび……?」
褒美とは、どういう意味なのか瞬時に理解できなかった。
「ああ。君が来るまでは仕事を終えても何もなかったが今は君が温かい美味しいお茶を用意して待ってくれている。それは私にとって特別な時間だ。……分かるか? 仕事を終えた後に妃とお茶の時間を共にすることが、私の褒美なのだ」
「……っ!」
ずるい。こういう時は決まって狼陛下で。
今度は何も言えずに俯いてしまう。
くすり、と。
「……もうすぐしたら終わるよ。そしたら君とお茶を飲もう」
ころっと声色が変わった。こういう風に緩急混ぜてくるのはさらに卑怯だと思う夕鈴だったが、今度こそ観念した。
いや、勝負は初めから決まっていたのだろう。

狼に捕らえられた時に、とっくに逃げ場を無くしたのだから。
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