幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設
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ホワイトデー

黎翔×夕鈴(新婚夫婦)
どちらかと言うと陛下視点

 
長く悩まされた厳寒の日々が終息し、次第に春の気配が国中のあちらこちらに満ち溢れ始めた白陽国。
麗らかな春の午後を過ごしていたある日、その国を統べる国王陛下が愛してやまない唯一の妃に尋ねたのが事の始まりであった。
「夕鈴、お願いがあるんだけど、僕に料理を教えてくれない?」
「え? 料理、ですか?」
正式に結婚してから数ヶ月が経ち、ようやく国王陛下の正妃として慣れてきた夕鈴は夫・黎翔からの突然の“お願い”に不意を突かれたようだ。
「どうしたんです、急に」
夕鈴はただただ驚くしかないので、疑問を投げかける。
「うん……ほら、この間のバレンタインデーにチョコレートをくれたでしょ? そのお礼に、夕鈴に僕が作った料理をご馳走したいなって思ってこの間厨房を借りて作ってみたんだけど、僕そういうの全然したことないからうまくできなくて……。でね、考えたんだけど、僕が作るから夕鈴、横で教えてくれないかな」
「で、でも私、料理なんて、結婚する前に作ったああいう家庭料理しか作れませんよ!?」
「それがいいんだよ。大切な奥さんのための料理だから、好きなものを食べさせたいんだ」
バレンタインデーのお礼として何か贈り物を考えたが、倹約生活が染みついているために高価な衣装や装飾品に対して未だに抵抗を示す夕鈴だ。
考えた結果、夕鈴の好物を作ってご馳走することが最良の策であることに行き着いた。
そして黎翔は夕鈴に内緒で事を進めようと、先に宮廷料理人に話をつけて厨房を数時間借りて書物と睨めっこしたのだが、慣れないためにうまくいかず失敗してしまった次第であった。
その結果を踏まえ、夕鈴に素直に目的を打ち明け、教えを請うことにした。経緯を思い返しながら隣に座る夕鈴を見たところ、この提案を特別嫌がっている様子は見えない。
「分かりました。お休みの日はあるんですか?」
「明後日なら都合がつくよ。ちゃんと時間を作るから安心して」
「はい、明後日ですね。厨房には私から食材の調達をお願いしておきますね」
「ありがとう。じゃあ僕、溜めてる仕事を片づけてくるね」
「えっ、今日のお仕事終わったんじゃなかったんですか!?」
長椅子から席を立つと、夕鈴は目を丸くした。
「ごめんね、どうしても君の顔が見たくて休憩って言ってこっちに来たんだ」
満面の笑みを浮かべながら黎翔は答える。なんと黎翔は政務の休憩と言う名のサボりの間に、夕鈴のいる後宮に足を運んでいたのだった。

ある日の午後、厨房にて――食材に触る前に手を洗い終えた黎翔が夕鈴に向き直る。
「今さらですけど、本当に私の好きなものでいいんですか?」
「うん」
黎翔のリクエストの通り、夕鈴の好きなものである炒飯とエビ餃子を作ることになった。まず下処理に時間がかかるというエビ餃子から作り始めることにする。
「エビは殻つきの方がおいしいんです。殻はこうやって剥いて下さいね。で、容器にエビと水と片栗粉を入れて、片栗粉が灰色になるまで揉んで下さい」
「灰色?」
「ええ、これでエビの臭みと灰汁が取れるんです。ちょっと時間がかかりますけど頑張って下さい。私はお米研いでおきますから」
「はーい」
黎翔の良い返事に夕鈴はにっこり微笑んだ。しばらく力を入れて揉んでいると、隣でガシガシと米を研ぐ音が聞こえてきた。
ふと横を見やると、正妃ではなく主婦の顔をした夕鈴がいた。黎翔にだけ見せてくれるこういう表情が見られるのも料理を教えてもらう醍醐味かもしれない。
エビを揉みつつもずっと見ていたら、米を研ぎ終えたらしい。満足そうな横顔だ。視線に気づいたらしい夕鈴が漸く顔を上げた。
「……えっ陛下? やだ、見てたんですか!?」
「うん、可愛いなーと思って」
「なっ……やめてください、恥ずかしいじゃないですかもうっ! ……陛下の方はできましたか?」
「うん。こんな感じでいいかな。次はどうするの?」
「ではそのエビを細かく切って、あじのたたきを作る感じで包丁で叩いて下さい」
包丁で叩く?
刃物で切ることはあっても叩くことはないので、いまいち具体的なイメージが湧かない。しかし一応言われた通りにやってみる。
「こうかな?」
「えぇと、もっとこう……」
もどかしそうに手を動かして教えてくれるものの、手の動きだけでは力の加減は伝わらない。やってはいるものの夕鈴の納得のいくような出来は十分にできていないらしい。
「陛下……包丁貸して下さい」
夕鈴は胸のあたりで動かしていた手を止め、静かに告げた。主婦の部分を刺激させたのだろう、包丁を渡した途端、夕鈴は黎翔がときめいたいつかのパフォーマンスのように鬼気迫る顔で続きをしてくれた。
家事に関しては厳しくも逞しい嫁に惚れ直したのは言うまでもない。

「なんとかできたね」
「陛下って案外手先が器用なんですね。餃子包むの、初めてにしては上手でしたよ」
餃子を載せた皿を卓に並べながら夕鈴が言う。
「そう? 料理上手な夕鈴に褒めてもらえるなんて嬉しいな」
「お茶も淹れましたし、いただきましょうか」
「うん。じゃあ、いただきます」
箸を手に取り、自分で蒸し揚げた餃子を挟む。いつもは毒味の後に食べる料理も、今日は違って温かいのが嬉しい。
一口食べると、中に包まれたエビの熱さが口内に伝わり、火傷しそうなほどだった。
「熱いけど、やっぱりできたては美味しいね。はい、夕鈴も」
自分で揚げた方の餃子を取り、身を乗り出して夕鈴の口元へ運ぶ。
いわゆる、「あーん」である。
結婚前のバレンタインに交わしたやり取りを思い出した夕鈴が顔を真っ赤に染めた。
「ちょっ! は、恥ずかしいです…っ」
「ほら食べて、夕鈴?」
折れずにまた口元に近づける。
「~~っ」
ぱくり。逡巡して漸く口を開けてくれ、餃子を口に含んだ。
「あつっ……」
「どう?」
「……美味しい、です」
何度か噛みながらも、怒りを上回る恥ずかしさで半泣き状態かつ悔しそうに黎翔を睨んでる。
そんな上目遣いで睨んできたって庇護欲を刺激して可愛いだけなのに、夕鈴はまだ分かっていない。
炒飯も同じように食べ、夫婦で一緒に作った晩ご飯と楽しいひと時で満腹になった。
一緒に食器や使った調理器具を洗い終え、夕鈴の淹れてくれたお茶とお菓子で一息つく。
この時間が、夫婦になった今も、何ものにも代えがたい時間である。
「前に、お嫁さんの作ったご飯を一緒に食べるのは家族みたいって言ってたけど、今は本当に家族になったんだよね、僕たち」
「そうですね……なんだかまだ信じられない時があります」
結婚前の頃を思い出したのだろう、夕鈴は静かに微笑んだ。
「エビ餃子の作り方覚えたからまた今度作ってあげるよ」
「はい、陛下」
静かに肩を抱き寄せると、夕鈴は甘い雰囲気が訪れたことを察知し、甘えるようにしなだれかかってきた。甘い雰囲気に慣れずにいた結婚当初に比べると、いくらか慣れたようだった。
強張(こわば)る癖がなくなり、おとなしく雰囲気に身を委ねてくれるようになってくれたのが嬉しい。
抱き寄せる手と反対の手で夕鈴の顎を上げる。次の行動を察知して黎翔を呼ぶ声を出す前に、塞ぐように口づけた。
「これからもよろしくね、夕鈴」

おまけ
「今何と仰いましたか、陛下……」
「昨日夕鈴と一緒に料理したって言ったんだ。餃子を一緒に包んだが、夕鈴が丁寧に教えてくれて――」
惚気る黎翔を横に、側近はわなわなと体を震わせていた。
この一言で黎翔に料理をさせたことが李順に知られてしまい、後に夫婦共々叱られることになる。

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読んで下さってありがとうございます。
久々の更新はホワイトデーSSです。
書き終わってみると小犬陛下だけで進んでいました。
甘さが……ものの見事にないですね……。
もう少し陛下に料理している夕鈴をイチャイチャで邪魔させたりしたかったんですが、うまく思い浮かばず(苦笑)
個人的に気に入ってるところは一番最後の李順さん(笑)
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