幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設
2017年06月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年08月
TOPスポンサー広告 ≫ 指に、そっとTOPイジー×アルディーナSS ≫ 指に、そっと

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | Comments(-) | Trackbacks(-)

指に、そっと

8000hitお礼SS
お題サイト様:確かに恋だった
指に触れる愛が5題:指に、そっと

イジー×アルディーナ(婚約中)
時期的にコミックス1巻巻末おまけ辺り

 
手を繋ぎたいと思ってから、何分が過ぎたのだろう。アルディーナは、ある一点を見つめながら思った。
今、アルディーナは婚約者のイジーと並んで歩いている。
場所はローシェンの城内の回廊。中庭へ続く回廊はすぐ外に面しており、壁はなく大きな柱がいくつも並んで立つ。穏やかな風が柱の隙間から吹いている。ローシェンは基本的に温暖な気候のため、年中吹く風は心地いい。
彼はいつもと同じく、訪ねてくれる際の贈り物をアルディーナに渡した。今日は視察の先の市場にあったという民芸品の手作りのオルゴールだった。奏でる音楽は耳慣れないものだが、ゆったりしたテンポと優しいメロディーが調和を保つ。
箱の装飾は変わった趣向で施されている。蓋を開けるとメロディーが流れると同時に簡素な小物入れにもなっており、お得があると気に入るイジーはその点を推していた。
変わった趣味の贈り物は相変わらずだが、こうして毎回律儀に贈ってくれることでアルディーナを気遣う彼の様子を感じ取ることができるため、とても嬉しく受け止めている。
今回も丁寧に受け取り、自室の一部を占める、イジーからの贈り物が並ぶ場所へと置く。これからまたしばらく眺めて過ごすことになるだろう。
それからアルディーナは勇気を振り絞り、中庭を散歩しようと、自室の扉の前で待たせていたイジーを誘った。実を言えば恥ずかしかったので、目を合わせられなかった。イジーが快く了承してくれた時、気づかれないようにさりげなく安堵の溜息を零した。

そうして自室から中庭へ続く回廊を歩む今に至る。外を歩くと見慣れないものがあれば好奇心のままに行動をしてしまうアルディーナの迷子の予防策として、今では自然と手を繋ぐことが2人の間の決まり事となっている。
しかし今は外でもなく、むしろ生まれた時から誰よりも住み慣れた城。決して迷子にもならないし、転ばない(はずだ)。だから、自然と手を繋ぐということが起こらない。
それでも、アルディーナは彼と手を繋ぎたかった。
少し前なら至近距離にいるだけでも緊張していたが、男装をして彼と出掛けるようになってからはその緊張もほんの少し和らいだ。きっと彼の優しさや気遣いを何度も感じたからだろう。
ただ、手を繋ぐことに関しては、アルディーナは未だに慣れないでいる。
乾いた手の感触。骨ばった指。握られたわずかな力。触れた時の自分とは違う温もり。深窓の姫君として育てられたアルディーナにとって、男の人を意識させるそれら全てが未知のものだった。
手を繋ぎたい――そう思いつつも実行に移せない。だから、右を歩く彼の左手をちらちらと何度も見下ろしている。
背の高いイジーは気づいていないのか、特に気にも留めていない様子である。
素直に手を繋ぎたいと言いさえすれば、イジーは叶えてくれるだろう。淡々とした表情で手を繋ごうとする仕草を頭の中で簡単に思い浮かべることができる。
しかしそんな簡単なことでさえ、アルディーナはなかなかできなかった。願いや意思を口にするなど、これまで皆無だったからだ。婚約する意思は自分できちんと決めたけれど――。
(……指にさりげなく触れるくらいなら、できるかしら……?)
だが、どうすればさりげなさを装って触れることができるか分からない。
とことこ歩きながらアルディーナは模索する。良い案は浮かばない。今度はちら、と右を仰ぐ。彼の向こうに晴れ渡った空が一面にある。見上げた彼の顔を窺う。
まっすぐ前を見つめたままの瞳。鼻筋の通った横顔。手入れはしていないと聞いたのに吹く風によってさらさらと流れる、後ろで結わえられた長い髪。
(イジー様って、本当に素敵……)
見惚れる、という類いの視線を向ける。しかしそれは気づかれないよう、ほんの一瞬。また視線を元に戻して歩き続ける。
(――手、繋ぎたいな……)
さっきよりも強く思った。そしてアルディーナは無意識にイジーの手の方へ指を伸ばす。そっと、小さな細い指が彼の指に触れた。触れたまま。そこから離さない。指と指が触れているだけで、繋いだとは言えない。
けれど、それが散歩の誘い方すらたどたどしいアルディーナの精一杯なのだ。

手に触れる微かな感触に気づいたイジーは手元に視線を遣る。隣を歩く婚約者の指が遠慮がちに触れているのを捉えた。次にその指の持ち主――アルディーナへと視線を移す。俯いて顔は見えないが、髪を一房かけた耳とドレスの襟から覗くうなじが真っ赤に染まっていることに気づく。
彼女が珍しく散歩に誘ってきたことも相まって、手を繋ぎたいという意思の表れだと悟った。そして余計なことは口に出さず、触れている指を取り、少しだけ手を引き寄せてきちんと繋ぐ。
それまでの状態が変化したことに気づいたアルディーナはイジーを見上げ、目が合った時に柔らかく嬉しそうに微笑んだ。

--------------------
お題を一目見て、手を繋ぎたいけど恥ずかしくて口に出せないアルディーナが浮かんで。
見直して初めて、会話が一切ないことに気づきました。
スポンサーサイト

Comment













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。