幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設



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帰りが早まった理由は :: 2012/09/16(Sun)

遅くなりましたが、10000hitのお礼SSです
イジー×アルディーナ(新婚夫婦)
9/20 地の文追加

 
結婚式を挙げてからしばらく。夫となったイジーが結婚してから初めての遠出の仕事に出かけて3週間、夫婦は離れ離れの日々を送っていた。王太子妃となったアルディーナは婚約中と同じように手紙のやりとりをしつつも、会えない淋しさを募らせては想いを馳せた。さらに、寂しさのあまりに数日間満足に眠れない夜を過ごすこともあった。
しかし、それも今日まで。出発前に知らされていた予定よりも早く帰ってくることが決まった。それが今日の夕刻という旨の知らせを受けたのは、3日前のこと。手紙を読んだアルディーナは頬を緩ませ、確認するように何度も何度も読み返した。

イジーが帰ってくる時間は日没前の夕刻だと言う。辺りは美しい夕陽に晒され、城や庭一面がオレンジ色に染まっている。帰りを待ちきれないアルディーナが城の入り口で待つ。姿はまだ見えないが、今か今かとそわそわしながら待ちわびている。
(時間的にはそろそろのはず……)
しばらくして遠くから規則的に聞こえた蹄の音。その後、彼女の視界が捉えたのは紛れもなく夫の姿。駆け寄りたい気持ちを抑えて待つ。一行が城の入り口前の石畳の上に集まってくる。
漸くアルディーナはイジーの方へ近づき、歓喜の色を滲ませた満面の笑みで出迎える。
「お帰りなさいませ、イジー様!」
「ああ」
イジーは鞍からさっと降りて、やって来た馬宿の管理人に愛馬の手綱を任せる。そうして久しぶりに会う妻に視線を移し、じっと見つめる。
アルディーナも不思議そうに見つめ返す。滅多に顔に表さない夫だが、疲れが少し滲んでいるように見えた。
「……あまり寝ていないのか?」
「えっ?」
他にも言うことはありそうだが、イジーの手が顔に伸びてくる。見送り以来初めての接触は、目尻へ。乾いた感触の親指が撫ぜるようにそっと滑る。
「少し充血している」
「あっ……あの、これは、その……」
その通り。早々に見破られてしまった。特に最近は隣にあることに慣れてしまった温もりが恋しくなり、夜も満足に眠れていない日があった。アルディーナの答えを待つ間にイジーの指が顔の輪郭をたどる。周囲には顔馴染みの者がいると言えども一応公衆の面前という状況である。こうして触れるのは彼にしては極めて珍しいことだ。たとえこの場は誤魔化しても、イジーはもうアルディーナの答えが寝不足だと分かっているに違いない。彼が心配してくれてるのは、やりとりしていた文字だけの手紙以上に分かる。だからアルディーナは素直に返す。
「イジー様が隣にいらっしゃるのに慣れてしまって、1人で眠るのが寂しかったんです……夜も、あまり眠れなくて……」
「……」
しばしの沈黙。アルディーナが顔を上げて目を合わせると、何か言いたそうな表情を浮かべている。イジーが口を開いた時に「イジー、ちょっといいか?」と後ろからヴィートがすまなさそうに呼んだ。
そうだ、イジーは仕事から帰ってきたばかりだ。2人してそれを忘れていたことに気づく。
そして彼は迷ったが言いかけたことを呑み込み、仕方なくそちらへ向かった。同時に触れていた指も離れる。
何を言おうとしていたのだろう。
1人残されてしまったアルディーナに、今回同行していたらしいカテルジナが声をかける。
「妃殿下」
「カテルジナさん! お帰りなさい」
ほんわり笑顔で迎えられたカテルジナは、結婚式の日までイジーの結婚相手がアルディーナだったということを知らなかった。
お披露目の際に漸く拝見できると思いきや、見知った顔がそこにあった。周囲に自国他国問わず大勢の招待客がいたこともあり、驚きは最小限に抑えた。もちろん改めての挨拶では最大限に2人を祝福したのは言うまでもない。
ローシェンの外交官の孫だと思っていた少年が実は男装で、まさかそれが婚約者であった深窓の姫君と同一人物だったと誰が思うだろう。最初の内は多少の混乱もあったが、今は2人をあたたかく見守っている。ヴィートと一緒になってアルディーナを唆してイジーを困らせるという遊びもその一環だ。
カテルジナはアルディーナに微笑む。
「ただいま戻りました。今日もお可愛らしいですね。……ん? 失礼ですが妃殿下、あまり眠られていないのですか?」
アルディーナはまたしても先程と同じ質問を投げかけられる。そんなに目に見えるほどなのだろうかと自己管理の甘さに落ち込む。
「はい。実は――」
イジーに伝えた充血の理由を同じように伝える。
「ふむ、なるほど……」
事情を知ったカテルジナは何か考えるように黙った。顎に指を沿えて思案する様はごく自然で、彼女によく似合っている。中身はともかく、美人だと佇まいだけで様になる。
「……妃殿下、お耳を拝借してもよろしいですか?」
「? はい」
カテルジナは屈んで耳元に口を寄せる。こっそり耳打ちされたその内容にアルディーナは「え」と声を漏らした。
その時。
「――カテル」
イジーが戻ってきた。
「はい、殿下」
「あちらで呼んでいるぞ」
「分かりました。それでは妃殿下、失礼します」
「あっ、はい。お仕事頑張ってください」
入れ違いでカテルジナを見送ると、イジーが尋ねた。
「……アル。カテルと何を話していた?」
「えぇと……女同士の秘密です」
『女同士の秘密』とはとても便利な言葉だ。そう言ってしまえば大抵のことは言わずに済む。先程のことは到底本人には言えない。言ったらどういう反応が返ってくるかは少し気になるけれど、とアルディーナは密かに思った。
「……そうか。戻るぞ」
秘密と返されたイジーは深く詮索しなかった。自分の知らぬ間の出来事だったが、会話の相手が可愛いもの好きなカテルジナゆえに多少心配はあるものの、アルディーナを傷つけるものではないと分かっている。それに嬉しそうな笑顔を浮かべているから、それは杞憂に終わった。
「あの、イジー様。お茶の用意ができてますから、一緒に飲みませんか?」
横に並んで歩き始め、控えめにお茶に誘った。しかし口にした直後に気づく。
「あ、でもお仕事がありますよね……」
帰ってきたイジーを労る意味も含め、久々にお茶を共にするのを楽しみにしていたアルディーナだったが、イジーには仕事が待っていることに今更気づいた。舞い上がっていた自分を恥じて、少し俯く。
すると、アルディーナの小さな頭に大きな手が、ぽんと載せられた。ゆっくり顔を上げると、目が合う。
「言う通り書類仕事があるが、おまえと茶を飲むぐらいなら構わないだろう」
告げた途端に、ぱあっ、と嬉しそうな笑顔が咲き誇る。
「はいっ」
その後、いつも通りの無表情を横に話しかけつつ、カテルジナに教えられたことを心の中で反芻する。

『殿下は、妃殿下からのお手紙を毎回の休憩時間に繰り返し読まれていましたよ。これは私の印象ですが、殿下にしては珍しく仕事を丁寧かつ早く終わらせようと努めているように見えました。だから予定より早くの帰りだったんです。――よほど妃殿下にお会いしたかったのでしょうね』

にこにこと嬉しそうな妻を見て、イジーは不思議そうに首を傾げた。しかし、そんな夫に対してアルディーナはまた柔らかく微笑んでみせる。
――待ち焦がれるほど会いたかったのは、アルディーナだけではなかったと解釈をすることに決めた。

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以上、10000hitのお礼SSとなります。
ありがとうございます。
ちょっとぬるかったかも。

実際に、寂しさを滲ませる手紙を読んで、旦那様は頑張られたわけです。
もちろん仕事で離れているので早く帰りたいと口や表情に出さない、けど見てる人は分かるんですよね。
ヴィートとかカテルとかは。
そして実際嫁に会うと、手紙の文面以上に寂しかったらしい様子が目に見えて。
SSを書き終えてから「今後はあまりの遠出は控えるか」とひとりごちる旦那様を想像(笑)
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  1. イジー×アルディーナSS
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