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<幸せな音>は管理人 幸音(ゆきね)による本誌ネタバレ感想と二次創作のサイトです。 『狼陛下の花嫁』の黎翔×夕鈴、『ひみつの姫君 うわさの王子』のイジー×アルディーナ、ぬるめですが、それぞれの年齢制限のある話も書いてます。年齢制限の話はパスワード必須です。入力画面での注意事項を必ずお守りください。 当サイト作品は全てフィクションです。実在の人物、団体、事件、史実などには一切関係ありません。原作が大好きです。著作権侵害を目的とせず、原作者様、出版社様とは一切無関係の自己満足個人サイトとなります。 更新はオフ優先ですので、基本的に不定期です。本誌ネタバレ感想は書きますので、最低月1の更新になります。 励みになりますので、よろしければ拍手やコメントしてやってください。何かございましたら拍手コメントやメールフォーム等にて。 拙い文章ですが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。

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独り占め

黎翔×夕鈴(偽夫婦)+紅珠
 
風で少し肌寒くなってきたある秋の午後。

正妃第一候補であった氾 紅珠と今では茶飲み友達となり、後宮に遊びに来るのももう何度目だろう。今日もお喋りに花を咲かせながら、2人は庭を眺めながら楽しんでいる。
その最中(さなか)に、紅珠が頬を染めて気恥ずかしそうに口を開いた。
「あの、お妃様。後宮では侍女の募集はしておりませんの?」
「えっ!?」
それまでの話題から一変、突然予想外の質問をされた夕鈴は思わず素の反応で返してしまった。普段驚いたとしても特に大きな声を出さない紅珠は、そんな夕鈴の反応に少し驚いた。
「お妃様……?」
上目遣いで不安そうに尋ねる表情を前に、努めて妃の表情に戻して問い返す。
「ごめんなさい、あなたの口から侍女だなんて言葉が出てきて驚いてしまったの。突然、どうして?」
夕鈴が驚くのも無理はなかった。今、目の前に座る紅珠は王宮に勤める大臣を父に持つ、正真正銘の名門貴族の娘だからだ。花嫁修行として中流以下の貴族や庶民の娘が働くことはあるが、彼女は後宮に妃として入ることはあれど誰かに仕えるような身分では決してない。そもそも、そんな家柄だからこそ彼女は黎翔の正妃第一候補にまでなっていたのだ。
「はい。私、考えましたの! こうしてお妃様とお話しするために後宮にお伺いするのも良いのですけれど、侍女としてお妃様にお仕えすれば今よりももっと長いお時間、お妃様のお側にいられるのではと思いましたの!」
天真爛漫な笑顔がぱっと咲き、その場が華やぐ。笑顔ひとつ取っても、まとう雰囲気はお嬢様のそれそのもの。
紅珠が純粋に慕ってくれているのは夕鈴も分かる。価値観が全く違うため話が食い違う時もあるし、向けられる好意も程度を越えると驚くばかりである。
しかしながら、自分より年下で本来なら身分もずっと上だというのに、それを知らない紅珠の分け隔てない人当たりの良さは、後宮において話し相手の少ない夕鈴にとっては心地いい。
だがしかし、侍女となると話は別問題。
もし仮に紅珠が侍女になったとしたら、演技の時にはいたたまれないほどの視線を受けるだろう。何よりも、このお嬢様にあれこれ世話をしてもらうのも申し訳なく思うのはまず間違いなく断言できる。
さらに経費節減のため、これ以上の雇用は許可できないと予想できる。これは常々節約を口にする李順が言いそうな点だが。
(前に紅珠と適切な距離を保ちつつ友好を深めるようにって言われてるけど、侍女はいくらなんでも……ねぇ……?)
誰かに向けるのではなく自問自答をしていると、すすり泣く声が突如耳に入った。はっとして顔を上げる。
「お妃様……私が侍女になると、ご迷惑ですか……?」
紅珠の大きな目からは今にも涙が溢れそうなほど膜を張っていた。
(泣かせちゃう!)
「あっ、違うの! えぇと、迷惑では……ないけれど、私の一存では……」
泣かせたくなくて、はっきり断言できない苦しい言い逃れをする。それでもまだ紅珠はうるうると目を潤ませている。さめざめとした様子にますます狼狽えてしまう。
(ああ、何かうまいフォローはないかしら!)
誰かにこの場を助けてもらいたいがそうもいかない。夕鈴は必死に考えを巡らせる。
「あのね、紅珠」
「――侍女は募っておらぬ」
(え、)
その場にあるはずのない低い声が重なった。
紅珠と顔を合わせようとするも彼女の視線は夕鈴ではなく、その背後に向けられている。そして、目に見えて青ざめている。
(まさか……)
夕鈴が恐る恐る振り向く。するといつのまに来たのだろう、その場に黎翔が佇んでいた。
「陛下! どうして、今はご政務中では……」
「休憩にしたから会いに来たのだ。邪魔したか?」
そう口にしながら、黎翔は夕鈴の髪を一房掴み、唇を押し当てた。いつもながら人前での演技は慣れない。
「い、いえ……」
一目会いに来たと言う黎翔は甘い微笑みを見せる。そして、紅珠に向いた時は通常通りの狼陛下の表情に変える。
「……して、氾 紅珠」
冷たい声を放った本人以外は、その場の空気が冷えたような錯覚を覚える。夫婦のイチャつきにうっとりと視線を向けていた紅珠だが、名前を呼ばれてびくりと肩を揺らして怯えと共に畏まる。
「は、はいっ。本日は――」
「挨拶は要らぬ。侍女云々の話は、父親の意向か?」
「め、滅相もございません……! た、ただお妃様にお仕えすることができましたらどんなに幸せなことと思った私の妄言でございます。決して、父の意向ではございません」
可哀想に、紅珠は声も体も震えている。厳しい声が夕鈴に向けられたものではないと言え、日々聞かされている声に慣れないのは同じだ。夕鈴は黎翔との距離を詰めて、彼の着物の袖をつい、と引っ張った。
「陛下、お話していただけです。紅珠もそう言っているのですから、もうそんなに怖いお顔をなさらないでください。……ね?」
努めて微笑みを向ける。花嫁に甘い夫は溜息を吐きながらも従った。
「……その発言はここだけにしておけ。二度は許さぬ」
「は、はい……」

――その後、紅珠は予定よりも早い帰宅の意思を示した。後宮の外で、夕鈴だけが紅珠を見送る。
「先程の陛下とお妃様のやりとりを拝見して、創作意欲が湧きましたの。また読んでくださると嬉しいですわ」
去り際にこっそり耳打ちされたが、夕鈴は返す言葉に戸惑った。

見送った後、黎翔はまだその場で待っていた。そのまま庭に面した長椅子に腰かける。
「……もう、陛下ってば、あんなに怖い思いさせなくてもいいじゃないですか。泣かせてしまっては困ります!」
「泣かせてはないよ、現に泣いてなかったし。ただ、夕鈴の侍女なんて絶対だめ」
「それは経費削減のためですか?」
現実的に考える夕鈴に黎翔は苦笑する。
「それもあるけど……夕鈴を独占されるでしょ? 下手したら侍女の方が僕といる時間より長い時もあるし……今ついてる彼女たちはいいけど、氾 紅珠はだめ。だって夕鈴を独り占めしていいのは、僕だけの特権なんだから」
「えっ」
夕鈴が気づいた時には既に腰を引き寄せられた後だった。
「ちょ、あの、今誰もいないのに!」
「もうすぐあっちに戻るから。その前に夕鈴補給させてね」
「~~ッ!」
抵抗するも背中に手を回されてしまい、距離がゼロになる。頬擦りできるほど近く、夕鈴は抵抗を諦める。
(「補給」って言うほどだから、疲れてるのかな……)
今日は紅珠と会うために執務室に足を運んでいないから、状況は知らない。
けれど、夕鈴はなんだか頭を撫でてあげたくなった。こうして甘えてくるところは、小犬のように見えてしまうからだろうか。
そして黎翔は頭を、抱き寄せた夕鈴の肩に載せる。華奢な体が身じろぎしたのを感じ取るが、甘えたいので気にしないことにする。それから、夕鈴は強ばっていた体の力を抜けさせた。

(もう少し、このままでいたいかも……)
(もう少し、このまま抱き締めていたい……)

抱き締め合う2人は、しばらくお互いを独り占めしていた。

--------------------
「独占」を表現したくてタイトルは「独り占め」の方を。
何気に紅珠を登場させました。初めてですが、お嬢様の言葉遣いが難しいです。
最後は甘めに……
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