幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設
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なんてタイミング、せっかくのチャンス

お題サイト様:確かに恋だった
選択式127:なんてタイミング、せっかくのチャンス

黎翔×夕鈴(偽夫婦)
お正月SS

 
「あけましておめでとうございます、陛下。今年もよろしくお願いします」
元旦――黎翔は夕鈴の部屋を訪れ、夕鈴がいつもより増して丁重に出迎えた。
「あけましておめでとう、夕鈴。今年もよろしくね」
「はい。今年も仕事がんばります」
はつらつと応える夕鈴は、いつもより少し華美な雰囲気のある、大輪の花々が咲き誇る真紅の着物を着ていた。
それは、黎翔が先日夕鈴へ贈ったものである。黎翔は夕鈴を眺めて、にっこり満足そうに笑んだ。
「夕鈴。着物、よく似合ってるよ。着てくれてありがとう」
「本当ですか? 良かったです」
質素倹約を勧める臨時花嫁と言えど新年を迎えるには新しい装いを、と黎翔からある種懇願に近い贈り方をされたものであった。ただしこれは建前であり、単に夕鈴に似合う着物を贈りたかったのが本音であることを夕鈴本人は知る由もない。当の夕鈴は慣れないために、少し落ち着かずにそわそわしている。
「……あのっ、梅昆布茶を用意してもらったんです。朝餉の前にいただきましょう」
「うん」
そしていつも通り、2人は長椅子へ腰かける。
「今日はご政務はないんですよね」
「うん、今日はね。明日は臣下を一同集めて挨拶をしなければならないけど。――ありがとう」
黎翔が夕鈴から湯呑みを受け取る。芳しい香りが漂い、ほっとする。
夕鈴も隣で梅の香りを嗅いだ。
「つまり、今日は1日お休みということですよね?」
「うん、そういうことになるね」
「なら、後で羽子板しません?」
「羽子板?」
「青慎に頼んで、家から送ってもらったんです」

一面が白銀の世界に包まれている。
2人は雪が捌けた後宮の庭で、羽子板をしていた。

かこん、かこん、かこん……

羽が飛び交う音が響き渡っている。
遊び慣れている夕鈴にとっては、羽を何度も返すのは基本である。対する黎翔は、初めて遊ぶにしては上手に羽を返している。反射神経が良いのはさすがと言うべきか。
「――あっ!」
それまで掛け声を挙げながら羽を返していたが、夕鈴が声を漏らした。黎翔の返した羽が夕鈴の頭上を越えてしまったのだ。
「あ~また負けましたね」
少し離れた所で羽を拾い上げた夕鈴が振り返り、苦笑を零す。
「じゃあ、また描くね」
黎翔は側に置いていた墨と筆を手に取る。そして、夕鈴は黎翔に近づく。
既に夕鈴の顔には負けた証として墨で丸やバツが控えめに描かれていた。しかし、何度か負けたために描ける所は少なくなってきている。黎翔は次はどこに描こうか悩んだ。夕鈴は黎翔の前に立ち、目を瞑って描かれるのを静かに待っている。その無防備な姿が、彼の悪戯心を刺激した。
「夕鈴、目閉じててね」
「え? 閉じてますよ――」
ふに、
夕鈴の唇に何か柔らかいものが触れた。驚きのあまり目を開けると、黎翔が満足そうに頷いた。
「えっ、口に描いたんですか?」
夕鈴は訳が分からない。
黎翔はその様子がおかしくて、思わず声を出して笑った。
「あははっ、うん、そうだよ!」
「なっ、陛下、私そんなに見た目おかしいですか!」
「んー? おかしくないよ、夕鈴は今年も可愛いなって」
慌てふためく夕鈴に向けて誤魔化し笑いをする。
「!? か、可愛くないです!」
いつもの言葉ながら、夕鈴の頬は着物の色も同じく真っ赤になった。そして、気づかないまま。黎翔が墨で描くふりをして、夕鈴に口づけをしたことに。
訪れたチャンスは逃さない――それが珀黎翔という人であるのだ。

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あけましておめでとうございます!
今年1つめアップしましたw
久々に偽夫婦を。
陛下ならせっかくのチャンスが来たらやりそうかな、と。
着物は「狼陛下の花嫁」の世界での着物を想像してもらえると助かります。
羽子板をやったことがないので、表現で間違えてるところがあったら指摘してください(笑)
本年もどうぞよろしくお願いします。
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