幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設
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甘い夫婦

お題サイト様:確かに恋だった
お題:それは甘い20題
三題噺 05.不意打ち 06.視線 07.はちみつ

イジー×アルディーナ(新婚夫婦)+ベアトリス
ベアトリス視点
サイト1周年記念SS
時期は結婚式の1年後の夏

 
夏。ある晴れた日の、爽やかな風が吹く午後。
ガルニアの王城の、手入れされ美しく施された庭に面したテラスで、2人の姫がお茶会をしながらお喋りに花を咲かせていた。
「早いものですわね、あなたが結婚して1年経つだなんて」
「式を挙げたのがまだ昨日のことのようです」
「あなたからの手紙にも書いてあるから知ってますけど、イジー王子とは相変わらず仲がよろしいですのね」
「はい」
はにかみながら頷いたのは、先日結婚1周年を迎えたアルディーナ。
その彼女の正面に座っているベアトリスは、友人から発せられる幸せオーラに包まれた。手にしていた硝子のグラスを置いたアルディーナが控えめに尋ねる。
「ベアトリスは、その、結婚は……」
「縁談ならたくさん来てますのよ」
実際、それは見栄ではなく事実である。大国ゼシェカの姫であるベアトリスは、自分の結婚は政略結婚以外の何物でもなく、またそれを課せられた使命だと捉えていた。しかし、自分達兄妹とアルディーナが関わった一件で兄から、政略結婚よりも妹であるベアトリスが好きな人の元へ嫁ぐことを望んでいたと告げられた。
あれから幸せな結婚をした友人を持ってしまい、縁談相手と恋ができるかを選別の判断の基準にするようになったのである。それを教えると、アルディーナは嬉しそうに頷いた。
「それで、良い方はいらっしゃるのですか?」
友人として付き合い初めて1年が経つにもかかわらず、彼女は年下のベアトリスに対して依然敬語のままである。一度、敬語はなしにしましょうと提案するも、彼女の口調は変わらない。お互い気にしない性格だからか、以来そのままになっている。
「……良い、というか……気になる人なら」
ぽつりと呟くと、話に乗ってきた。
「まぁ! どんな方ですか?」
「……っ、ま、まだ私の中で恋だと決まってませんの! ……で、ですから、確定したらお教えしますわ」
照れたベアトリスが可愛く、アルディーナは微笑ましく眺めた。アルディーナから見て彼女は気は強いが兄想いの、根は優しい親友である。親友の恋を応援しようとにっこり笑った。
「その方と良い方へ向かうといいですね」
「……ええ」
照れが最高潮に達したのか、返事は控えめなものだった。その時、向こう側でテラスに通じる扉が開く音がした。
2人が誰だろうと思案していると、植えられた木々の通路の間から人影が見えた。耳慣れた足音で分かったのだろう、アルディーナの顔が綻んだ。
「――アル」
「イジー様!」
嬉しそうな表情を浮かべた彼女は立ち上がり、夫の傍へ駆け寄った。
(結婚しても、恋する乙女の笑顔のままですわね)
ベアトリスが彼らのやりとりを見つめていると、視線に気づいたイジーと目が合ったので席を立ち、挨拶をする。
「ご無沙汰しております、イジー殿下。本日はお邪魔しておりますわ」
「……ああ。ゆっくりしていってくれ」
「ええ」
イジーが必要最低限のことしか口にしないのは知っている。会話が苦手なことも分かっている。だから、ベアトリスは無理に会話を続けたりしない。
「これからお仕事ですか?」
問われ、イジーの視線がベアトリスからアルディーナに移る。妻に尋ねられても、彼の表情は変わらない。
アルディーナ曰く些細な違いはあるそうだが、たまにしか会わない彼の表情を区別することは至難の技だ。
彼女はこの男のどこがいいのか。以前説明されたものの、たまにベアトリスは分からなくなる。
「今朝も言ったが、明日には戻ってくる」
「はい……」
と、アルディーナはしゅんと寂しそうに眉を下げた。
(幻覚かしら。頭に子犬の耳が生えてるのが見えますわ)
などと若干失礼なことを考えていたら、不意にアルディーナがベアトリスの方に振り返った。
「あの、ベアトリス、イジー様をお見送りに中座してもいいですか?」
告げるその顔は心底申し訳なさそうにしていて、ますます小動物のようである。本人は無意識だろうが、こんな表情をされると断れない。
「ええ、待ってますわ」
「ありがとう!」
幼さを残す顔に浮かぶは満面の笑み。どうしてこんなにくるくると表情が変わるのだろう。
天真爛漫とはこういうことを言うのだろうか。ベアトリスにはない、愛らしい一面である。
そうして、友人とその夫は揃ってテラスを後にした。見送ったベアトリスは、再び席に座る。
目の前のプレートに載っているのは、果物や菓子。どれから食べようかとしばらく思案し、手近にあったはちみつプリンに手を伸ばした。すると、視界の端にある城の門扉辺りに、アルディーナとイジーが佇んでいるのを捉えた。
傍には彼が移動の手段に使うのであろう、馬も控えている。向こうからは位置的に見えにくいのか、気づいていないようだ。なんとなく2人を眺める。明日には愛する夫が戻ってくるにもかかわらず、素直に寂しさを覗かせたアルディーナ。
それに対し、ベアトリスは自由奔放な性格の一方で、わりとドライな一面を持っていた。自分は兄が仕事で遠出する時でも見送ることは少ないからだ。
(好きな人と結婚したら、ああいう風になるのかしら?)
そんなことを考えながら口に運んだプリンは、はちみつの甘さ加減がちょうど良いものだった。甘さを堪能し、次にひんやり冷たいアールグレイを一口含む。そして、再びプリンを口にしようと、スプーンで掬い取った瞬間。
「――え」
短く声が零れる。まさに不意打ちだった。ベアトリスは、スプーンを思わず落としてしまった。
なぜなら、ベアトリスが見遣るその先で2人が、キスをしていたからだ。日頃から、新婚らしからぬ淡白なイジーが、アルディーナにキスを。
(あの無愛想で無口で無表情なイジー殿下が……!?)
信じがたい光景にベアトリスは驚愕し混乱する。彼らの周りには馬以外誰もいない。おそらく側近達は気遣ってその場を離れているのかもしれない。
先程まで一緒にいた友人夫婦のそれを見るのは、はしたないと感じつつも、まるで覗き見している錯覚に陥った。
もちろん彼らとて夫婦なのだから、キスくらいするだろう。だが、ベアトリスは彼らがいちゃついてる様子を想像できなかったのである。
思ったよりもキスの時間は短かったが、ベアトリスが我に返るにはわずかに時間がかかってしまった。
イジーが妻の小さな頭を一撫でし、馬へ跨がる。今度こそアルディーナは、小さく手を振り、夫を見送った。その姿はやはりどこか寂しげで、憂いを漂わせている。ベアトリスがぼんやり呆けたままでいると、いつのまにかアルディーナが戻ってきていた。
「お待たせしてごめんなさい、ベアトリス」
「……」
「ベアトリス?」
少女の面影を残して小首を傾げるアルディーナ。ベアトリスは彼女に言い放った。
「夏ですのに、お熱いですこと! いいえ、むしろこのはちみつプリンより甘いですわ!」
突然の口撃に、戸惑うしかないアルディーナ。
「え? ……! も、もしかして、見て……!」
「ええ、ここからバッチリ見えていましたわ!」
首肯すると、アルディーナはたちまち顔を赤らめて両手で覆った。ベアトリスはこほん、と咳払いをする。
「……ま、まぁ仲がよろしいのはいいことですけれど。あなたの旦那様がああいうのをするとは思いませんでしたわ。淡白そうですのに」
一通り吐き出すと、いくらか落ち着いた彼女がこくりと頷く。
「……最近、お見送りの時にしてくださるようになったんです」
「あなたが寂しそうに見送るからでしょう?」
「いえ、初めはカテルジナさん……あ、イジー様と一緒に働いてる騎士の方なんですけど、その方に、その、見送りの時にキスをしたら殿方は喜ぶと教えてくださって……」
「あなたからキスを!?」
「え、しないものなんですか?」
きょとん、ととぼけるわけでもなく、心底信じて疑っていない表情を向けられた。
ベアトリスは頭を抱えそうになった。直接会ったことはないが、おそらくカテルジナという人は冷やかしで唆したのだろう。そして、それを信じて疑わないのがアルディーナだ。
「最初はイジー様も驚かれたのですけど、次からはイジー様が……」
その続きは聞かなくとも、先程目撃した場面と嬉しそうに笑みを浮かべる彼女を見れば想像は容易い。
イジーは彼女が唆されたのを承知でキスされるのを享受し、それ以降は開き直って見せつけているのだろう。いや、周りには誰もいないから、見せつけているつもりはないようだったが。
だがしかし、ベアトリスは小さく溜息を吐く。
「……砂糖を口から吐き出すようですわね……」
「砂糖……ですか? プリン、甘すぎました?」
友人のずれた返答に、彼女は苦笑するしかない。淡白そうな夫婦が実は甘い雰囲気を潜めていた。その事実が、彼女には大きな衝撃だった。
子どもはまだできてないようだが、夜は夜で大切にされているのだろうなと少し羨ましく思った。
独り身としては、新婚夫婦の惚気ほどダメージが大きいものはない。たとえやめろと言っても、アルディーナ本人が無意識に惚気るので無理だろう。
(こうなったら早く結婚して、私も惚気を聞かせてやりますわ!)
生来の負けず嫌いが発揮され、密かに自分の心に誓った。

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だいぶ遅くなりましたが、開設1周年記念SSです。
読んでくださって、ありがとうございますv

サイトが1周年迎えたので、イジーとアルの結婚1周年の話にしました。
なのに、メインの2人ではなく、ベアトリス視点でしたが、私としては書いてて楽しかったです。
2組の夫婦にはないツンデレを意識してみたり。
第三者から見てもほのぼのラブラブ夫婦ってことを書きたくて、ベアトリスに覗き見させるような真似をしてしまいました(笑)
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