幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設



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くちびるに所有印 :: 2015/08/17(Mon)

お題サイト様:because
choice153:くちびるに所有印

イジー×アルディーナ(新婚夫婦)+ゼシェカ3兄妹


ガルニアの王太子夫妻は、ベアトリス主催の私的なお茶会に招待された。
8月半ばに社交界シーズンが終わるため避暑も兼ね、数日間ゼシェカのベアトリス所有の別荘に滞在する運びとなった。結婚前に招待された別荘とはまた別のものだと言う。
一体いくつの別荘を所有しているのだろう、と一国の元姫君であるにもかかわらずアルディーナは思った。
当然と言えば当然だが、弟のロベルトも同席している。と言いつつ、彼はお茶会に参加してもすぐに飽いてしまい、イジーを誘って手合わせをしている時間がほとんどである。ロベルトはあれからガルニアを頻繁に訪れてはいるものの、いつもはイジーの仕事が空いた時間にのみ手合わせをしているため物足りなく思っていたのだろう。今回の滞在は私的であるため、イジーがあまり仕事を持ち込んでいないこともあり、いくらでも付き合えることから、ロベルトは終始嬉しそうに誘うのだった。
そのため残されるアルディーナは久々に会ったベアトリスとのお喋りに花を咲かせている。
普段は手紙のやりとりを頻繁に交わしているが、やはり直接言葉を交わすと話題は尽きない。美しく施された薔薇園を上から眺められるテラスで、最近王室献上されたという老舗洋菓子店のスフレとさっぱりした味のレモンティーを傍らに楽しい時間を過ごしていた。だが、そこにとある訪問者が現れた。
控えていたベアトリス付きの侍女が介する前にその人物が声をかけた。
「――妃殿下」
「……あ、リカルド王子……!」
2人の前に現れたのは、ベアトリスとロベルトの兄でゼシェカの第一王子・リカルドだった。
妹のベアトリスも予想しなかったらしく、同時に思いもよらぬ人物の登場にアルディーナは息を呑む。結婚前に起きた出来事が不意に脳裏をよぎる。仮面舞踏会での初対面、後に求婚され、婚約者の無事を盾にローシェンに帰してもらえなかった数日間――。
友人の困惑している表情にいち早く気づいたベアトリスが兄の前に立ちはだかり、咎めるような目つきで睨んだ。
「お兄様、いくらなんでも急に無礼ですわよ。事前に申し出てくださらないと……それに、先日の件をお忘れですの?」
「すぐに辞去するよ、ベアトリス。……妃殿下、私の顔など見たくもないと思われるかもしれませんが、先日の一件についてもう一度謝罪させてください」
「あ、いえ、その件はもう……」
周囲を巻き込んだあの騒動はイジーが手を回して動いた結果、公にはならないようにして収束を迎えた。リカルドから直筆の謝罪の文書と求婚の撤回の申し出がローシェンにあったと言う。
リカルドはアルディーナの足元に跪き、その甘い顔立ちは申し訳なさそうに眉を下げる。突然やって来た兄に驚いたベアトリスは、成り行きを見守る姿勢へと入った。
「あの時、貴女を必要以上に困らせるつもりはありませんでした。私の行動が過ぎたばかりに……何度お詫びしても足りないほどです」
慌ててアルディーナは椅子から立ち上がり、躊躇いもなくリカルドの前にしゃがみこんだ。
「あの、リカルド王子……もう構いませんからお顔を上げてください」
「許してくださるのですか?」
リカルドが顔を上げて瞠目する。
「もうこれ以上引きずっても何も生みませんもの。これからは友人としてお付き合いください」
以前の暗い表情が嘘のように柔らかな笑みをリカルドに向ける。
「ありがとうございます……貴女のお優しさに痛み入ります。では妹の機嫌をこれ以上損ねないよう、勝手ながらこれで失礼させていただきます」
ゆったりとした動作で立ち上がり、踵を返すリカルドの背に向かってアルディーナが言葉をかけた。
「リカルド王子、あの、ありがとうございました」
礼を言われたことに驚いたリカルドだったが、今度はいつものように王子様然とした微苦笑をこぼした。
「貴女が礼を言う必要などありません。楽しい時間を邪魔して申し訳ない。貴女の滞在中、私はおりませんので何か不便があればすぐにベアトリスに申し出てください。それでは」
「少しお兄様と話してきますわ」
欠点のない笑顔を残し颯爽と去る兄をベアトリスが追いかけてゆき、1人ぽつんと取り残される形になったアルディーナはほっと息をつき、椅子に腰を沈めた。
しばらくしてから、そこへロベルトとの手合わせを終えたらしいイジーがテラスへと入ってきた。
「イジー様」
「妹が出て行ったが、何かあったのか?」
ぱっと表情を輝かせたアルディーナとは反対にイジーが怪訝そうに尋ねる。先に出て行ったリカルドには気づかなかったらしい。
「つい先程までリカルド王子がこちらにいらしたんです。先日のお詫びにと……」
「……そうか」
過程を聞かされたイジーは言いたいことはあったが、吹っ切れた笑みを顔に浮かべる妻の様子を目にして口を噤んだ。
しかしその直後、椅子に座るアルディーナの顔に影が差す。イジーがテーブルに右手を付き、上からアルディーナの顔を覗き込むようにしたからだ。
「アル」
イジーが名前を呼ぶことで反射的に顔を上に向かせ、紅を引いたアルディーナの唇に自分のそれを重ねた。嫉妬や苛立ちとまではいかないが、抑えきれない衝動に駆られた行為だった。
「え、ぅんん……っ!?」
流れるような動作に不意を突かれたアルディーナだったが、イジーが下唇を舐めるとびくりと細い肩を跳ねさせた。触れるだけのキスだが、味わうように愛らしい唇を何度も食む。
テーブルについていた右手はいつしか椅子の背もたれに移動し、華奢な体を背もたれに押しつけるような体勢になっていた。
「ん……っふ……んんぅ」
息苦しそうな様子に気づいて唇を解放する。
少し離れて眺めると、思った通りに口紅の一部がキスによって拭われて淡い色に変化していた。自分で意図的に仕掛けたキスにより、火照った頬以上に官能的な光景を前にしてイジーは目が眩んだ。
もう一度口づけようと、今度は頬に手を添える。
「アル……」
「あ……」
アルディーナが長いまつげを震わせながら目を閉じようとした、まさにその瞬間。
「――戻りましたわ、アルディーナ……」
「……っ!?」
「…………」
三者が一斉に固まり、その場の空気が一変する。
驚きのあまり声が出ずに口をはくはくとさせるアルディーナ、動じずに仏頂面になるイジー、直前まで何が起きていたか理解したベアトリス。
やがて口火を切ったのは、目撃者であるベアトリスだった。流れる気まずい空気を察知した彼女は、にっこり微笑む。ただし微笑んではいるが、目が笑っていなかった。麗しい兄とは異なるタイプの美貌の持ち主なだけに、笑顔に凄みがある。
「大変失礼しましたわ、この辺りはしばらく人払いさせておきますから」
「あっベアトリス! お願い待って!」
言い残してさっと立ち去っていく親友を羞恥心から涙目になって追いかけるアルディーナだったが、イジーは彼女を制止しなかった。
あの紅が崩れた口元を見れば、誰の目にも明らかな印(しるし)になるだろうと思ってキスをした。他の誰のものでもないことを示すために。
仏頂面の下には強い独占欲が隠れている。

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突発的に書きたくなったお話です。思いついてその日の内に書き終わりました。
一応メインは、アルディーナの口紅が落ちるキスシーンなのですが、前置き部分が長くなってしまいました。
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