幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設



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兎女王と小犬婿 3 :: 2013/11/06(Wed)

お題サイト様:確かに恋だった
選択式833:染まる僕、染める君

If話
夕鈴=白陽国女王。21歳
黎翔=臨時婿。17歳
キャラ設定転換のため、苦手な方は戻ってください

 
――庶民であるはずの珀黎翔が白陽国女王の臨時婿になって幾日。
女王である夕鈴の気配りもあって、予想していたよりも過ごしやすい。
夕鈴の側近であり黎翔の採用を決めた李順によるお婿教育は、礼儀作法だけでなく、婿として必要とされる教養もあって黎翔の日々は忙しい。彼は学問所に通えなかったが、元々勉強が苦手ではないために知識を深める楽しさを感じている。それもあってか、呑み込みが早いと李順が褒めたのはつい最近のことである。

迷子にならない防止策として侍女の案内の下、黎翔は王宮の回廊を歩いていた。
角を曲がろうとすると、騒がしい声が近づいていることに気づく。初め黎翔は官吏の言い争いかと考えたが、その中には夕鈴のよく通る声が耳に入ってきたので驚いた。周囲の人達が振り返るような声高な諍いであった。
様子を窺いたくて夕鈴達に気づかれないように自然と足音を忍ばせる。そうして体を壁に隠して顔だけそっと出して覗き込んだので、後ろに控えている侍女達は戸惑うしかない。少し距離があるはずだが、“兎女王”の怖い雰囲気を感じ取れた黎翔は身を疎ませる。
しかしながら、その恐怖感もすぐに終わった。
大きな声を張り上げながら何気なく視線を外した夕鈴が黎翔の姿を認め、名を呼んだからだ。さっきまで厳しい声でしかなかったにもかかわらず、一瞬にして柔らかいものへと変化する。
そして夕鈴がもう一度視線を家臣に向けたことで、彼らは黙るしかない。話を切り上げた夕鈴がこちらへ歩いてくる。いたずらが見つかってしまったような形になり、覗き見していた恥ずかしさから黎翔は顔を赤らめつつ歩み寄る。その背後で家臣達は視線の先にある黎翔を凝視していた。
(うう、視線が痛い……)
家臣達が彼に痛いほどの視線を送るのも無理はなかった。
夕鈴が臨時婿として採用した翌日に黎翔を連れて王宮で夫として紹介したものの、それが素性不明の婿とあらば、彼に向けられる視線の類いは決して好意的なものではなかったのだ。
たまに後宮から出ると、否応なしに好奇な視線を集めるばかりである。
「黎翔?」
彼の名前を呼んだ夕鈴はすでに目の前にあった。
「あの、お話はもうよろしいのですか?」
言いながら、ちら、と夕鈴が元いた所へ目を向ける。やはり家臣達は何も言わずに険しい目つきで睨んでいる。
「話? ああ、既に却下した話を持ってくるからそれを注意しただけのこと」
にべもない。
「それよりも黎翔、ここにいるということは何か私に用事でも?」
「え。あ、いいえ、あちこち散歩していただけなんです」
「そう。侍女がいるから迷うことはないね。ああ、私は政務室へ戻るからまた夜に。貴女達、私が戻るまで黎翔のこと、よろしく」
唇に浮かべた上品な微笑みは黎翔の傍に控えている侍女達をうっとりとさせた。
婿として過ごす中で気づいたことであるが、夕鈴が侍女や後宮の女官へ向ける声色は家臣に向けるものとは別らしい。
ここ数日で、後宮の中でしか働かない彼女達は皆、基本的に夕鈴に対して憧憬の念を抱いていることが分かった。曰く、お声は厳しいけれど身分が低い者へさりげなく気をかけてくださるから、と。
「――黎翔」
不意に夕鈴が名を唇に甘く乗せて右手を黎翔へ伸ばし、頬を撫でる。
考え事をしていた黎翔が驚いて身じろぎすると、ふ、と兎女王らしい余裕を含めた微笑を浮かべた。
「愛しい貴方と離れるのは何より辛いが行ってくる。夜まで私の帰りを待っているように」
「は、はい……もちろん、です」
頬に触れる柔らかな白い掌が名残惜しそうにゆっくりと離れてゆく。ただ寵愛を示すための演技なのに、まるで本当にそうであるかのように錯覚を起こしそうな。
そして夕鈴はさっと踵を返して、声をかけようとした家臣達を一目見てそのまま通り過ぎて行った。ぴんと背筋を伸ばした恰好いい後ろ姿だった。
不意打ちの演技に黎翔の鼓動が逸る。
(心臓に悪い人だ……!)
頬に含羞(がんしゅう)の色を浮かべて大きな体を竦める若い婿を、控えている侍女達が微笑ましく眺めていた。

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兎女王の怖さを小犬婿が体感するのと赤面させたくて書いたお話。
なのですが、あまり怖さを感じさせるエピソードではなかったかも。
タイトルはSSを書き終えた後にお題サイト様でぴったりなものがありましたので、それを。
ちなみに余談ですが夕鈴が却下した家臣の話は縁談話です。
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  1. 兎女王と小犬婿SS
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