【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設

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<幸せな音>は管理人 幸音(ゆきね)による本誌ネタバレ感想と二次創作のサイトです。 『狼陛下の花嫁』の黎翔×夕鈴、『ひみつの姫君 うわさの王子』のイジー×アルディーナ、ぬるめですが、それぞれの年齢制限のある話も書いてます。年齢制限の話はパスワード必須です。入力画面での注意事項を必ずお守りください。 当サイト作品は全てフィクションです。実在の人物、団体、事件、史実などには一切関係ありません。原作が大好きです。著作権侵害を目的とせず、原作者様、出版社様とは一切無関係の自己満足個人サイトとなります。 更新はオフ優先ですので、基本的に不定期です。本誌ネタバレ感想は書きますので、最低月1の更新になります。 励みになりますので、よろしければ拍手やコメントしてやってください。何かございましたら拍手コメントやメールフォーム等にて。 拙い文章ですが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
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無垢な誘惑者

お題サイト様:確かに恋だった
選択式996:無垢な誘惑者

イジー×アルディーナ(婚約中)
『140字SS 2』(ひみつの姫君うわさの王子)が元ネタです

 
まばゆい太陽の光と、溢れる夏の緑のにおい。
そして、くらくらする暑さを感じ、汗ばむ季節になった頃。
アルディーナは、その華奢な肩にかかるかかからないほどの長さだった髪を少しだけ切り揃えた。微妙な長さの髪が汗で首筋に張りついて気になったからだ。
来年の夏に行われる結婚式には伸ばした髪で臨むつもりだが、今年の夏は切ることにした。そのことを、久方ぶりに彼女の元へ訪れた婚約者が気づくかどうか試してみた。
「イジー様、何か気づかれませんか?」
「……?」
じっと見つめられるが、疑問を浮かべる表情である。アルディーナは苦笑しながら報告をした。
「髪を切ってもらったんですよ。どうですか?」
「……首元が涼しそうだな」
「……そうですか……」
淡々としながらずれた感想にアルディーナは肩を落とした。
切った髪の長さなど、彼にとっては気に留めない事柄なのだろうか。ある程度予想していたとは言え、抱いていたわずかばかりの期待は外れてしまった。
アルディーナがおしゃれをしていても、褒め言葉をかけてもらったことはない。
今日も仕立ててもらった新作ドレスを着ているのだが、気づいてもらえない。いや、そもそも気づかないと言った方が正しい。
けれど、そういうところが彼らしさでもあるので、勝手に期待していた自分が落ち込むだけである。イジーに気づかれないようにそっと息をついた。

爽やかな風によってつややかな髪が靡(なび)いている。
イジーは自分の前を歩く彼女の髪の動きを視界に捉えた。
さらさらと風で揺れる細い毛先がうなじにかかる。髪の黒さと首の白さに目を奪われる。
彼女の肌は白い。抜けるように白いというありふれた形容しか思いつかない。白磁のよう、と表した方が適切かもしれない。まるで引き寄せられるかのようにうなじに手を伸ばしかけた、その時。
「そうそう、イジー様」
突然アルディーナがこちらを振り向いた。不意を突かれたイジーはすぐそこまで伸ばしていた手を咄嗟に引っ込める。
「イジー様?」
狼狽しているらしい婚約者の様子にアルディーナが首を傾げている。動揺を悟られないようにしつつ、イジーは呼び慣れた彼女の名前を無意識に口にした。
「アル」
「はい」
名前を呼べば、素直な返事がある。アルディーナと向かい合う形になったので、イジーの目を奪っていたものはもう見えない。けれど、無防備に晒されたうなじに抱いていた邪(よこしま)な思いは未だ胸にある。
(何を言えばいい――言えるか、白いうなじが目の毒だと)
口を開いても代わりの言葉が出てこない。イジーは誰の目からも明らかに当惑していることに気づいた。

イジーを見つめていたアルディーナは驚いて目を疑った。
年上の彼はいつだって大人で、冷静沈着で、基本的に喜怒哀楽の変化を表に出さないタイプである。そんなイジーが珍しく言い淀んでいるのだ。しまいには彼は片手で前髪をくしゃりとした。
「あの、イジー様……ご気分が優れないのですか?」
「違う」
即答された短い否定の言葉。
見上げると確かに顔色が悪いということでもなさそうだった。ならば今の状態に陥った要因は他にあるのか。そっと様子を窺う。
「では……」
困惑している様子は分かるが、なぜそうなのかは分からない。イジー自身も言葉を探しているようだ。そうなってはアルディーナはどうすることもできず、つられて困惑するしかない。言葉を待つ間、長く黒い睫毛がその目元に微かな影を落とした。
「……アル」
沈黙が破られたのはそのしばらく後のことだ。
アルディーナは顔を上げ、眼差しを送る。彼が言葉にするのを躊躇っているように見えた。
観念したかのように、顔を半分覆っていたイジーの手が下ろされる。そして、心なしか首元をじっと見つめられている気がした。
「……服」
「え?」
「首が隠れる服にしろ」
「えっ……」
アルディーナはきょとんとした顔をする。言われた意味を理解できなかったからだ。
頭の中で反芻するが、これから暑くなる季節だからこそ髪を切ったのだ。加えて、この時分に首まで隠れる夏物のドレスは存在しない。
表情から察したのだろう、イジーが言葉を重ねた。
「ないのなら、ヴェールのついた帽子をかぶればいい」
「はあ」
思いがけない提案ゆえに気の抜けた相槌しかできない。一方、イジーは穏やかな表情をアルディーナに向けた。
「いいな?」
優しい声色だが有無を言わさない雰囲気に呑まれ、頷く。
普段着用ではないが、薄い生地のヴェールが備わった帽子なら仕立てたものがあるはずだ。
イジーの言葉の真意は分からない。けれど彼が、胸のつかえが取れたような表情を浮かべるので深く詮索しないことにする。
――無垢な誘惑者は、目元を和らげて婚約者に微笑んだ。

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元ネタとは微妙に違う流れになりました。
イジー様が言い淀むところなんかは書いている時に思いついたものです。
ヴェールのついた帽子は、コミックス2巻でゼシェカを訪れた時にかぶっていたものをイメージしてもらえると……

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