幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設
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新妻のバレンタイン計画

イジー×アルディーナ(新婚夫婦)
バレンタインSS

【お題】ほのぼのシチュエーション?ったー を使ってみました
イジアルのほのぼのシチュエーション
『あなた(私)の隣りで私(あなた)の隣りに腰を下ろすと私はあなたに「これ以上はもう何も望まないな」と言いました。』 

 
新興国であるガルニアの王太子と由緒正しいローシェンの姫君との婚姻も1年を越えた辺りから、無理矢理な政略結婚であるという噂がなくなりつつある。
なぜなら、王宮で働くメイドや兵士達が口を揃えて、王太子夫婦の仲睦まじさを語るからである。

2月14日。バレンタインデー。恋する乙女が好きな人へ、または友人同士でチョコレートを贈る日。
それはこのガルニアにも浸透してきたイベントである。

バレンタインデーの数日前、アルディーナは、夫のいとこ兼お付きのヴィートに声をかけた。
彼女は、夫が仕事をしている執務室から出てくるヴィートを待っていたのだ。それも、夫には内緒にしたい事案を話したいがために。
「ヴィートさん」
「どうされました、妃殿下」
「お聞きしたいんですけど、わたしが厨房を使うことってできますか?」
突然の質問にヴィートは面食らった。しかし、すぐに彼はアルディーナの目的を理解した。
「バレンタインのため、で合ってます?」
「ふふ、合ってます」
言い当てられて照れた表情を浮かべるアルディーナを、ヴィートは微笑ましく思った。
「たぶん妃殿下のお願い事なら聞いてくれると思いますよ。俺から話をつけておきましょうか?」
「いいえ、わたしがお願いするんですもの。今から厨房へ行ってみますね」
「そうですか」
「お仕事中、お邪魔してすみません」
「いえ。ああ、もちろんイジーには内緒ですよね?」
面白いことなら進んで乗っかるヴィートの確認に、アルディーナはくすくすと笑う。
「ええ、お願いします。それでは失礼します」
律儀に会釈をして、足取り軽く去っていくアルディーナの背中を、ヴィートはしばらく見つめる。
バレンタインデーまであと数日。いとこの新妻の可愛らしい計画は他言無用である。

厨房は王宮の2階の端にある。
アルディーナは途中ですれ違うメイドや執事達に挨拶をしながら、目的の場所へと向かう。
到着した厨房の入口で中の様子を窺うように目を向ける。
今は昼を過ぎたからか、皿洗いをしていたり、午後のティータイムの準備をしているようだ。
しばらく眺めていると、視線の先にいる1人のシェフと目が合う。彼は信じられないように瞬きを繰り返した。
「え、妃殿下……?」
「あ……こんにちは」
突如現れたアルディーナの姿を認めると、中にいた数名のシェフやパティシエ達は驚くしかない。
しかし、彼女の人柄の良さを知っている彼らはすぐに顔を綻ばせて迎合した。
厨房を束ねる総料理長が前へ出て、アルディーナに挨拶をして尋ねる。
「ご機嫌麗しゅうございます、妃殿下。ティータイムのご要望でしたら侍女からお伺いしておりますが、何か変更点が?」
「いいえ、変更はありません。わたしからお願いがあって参りました」
「お願い、ですか?」
首を傾げる彼らに向かって、アルディーナは初々しく頬を染めて伝えた。
「イジー様に贈るチョコレートをこちらで作らせていただきたいのです」
「おや、お安い御用ですよ」
あっさりとした快諾。そして、妃殿下のお願いに反対する者はいないのだった。

――来たる14日。
数日に渡る練習を繰り返して、ようやくパティシエが太鼓判を押してくれるほどのものが完成した。
不器用なアルディーナにとことん付き合ってくれた彼らの優しさを嬉しく思う。
さらに、休憩時間を確保するためにヴィートが今日の予定を前々から調整してくれたおかげで、イジーと2人で食べることができる。
午後のティータイムに一緒に食べるつもりなので、直前まで冷蔵庫で冷やして、お茶の用意の時に持ってきてもらうようにお願いしてある。
色んな人に感謝しなければならない、と彼女はあたたかい気持ちになる。
しかし、それは皆がアルディーナを好きでいるからこそ協力してくれるのだということに気づいていない。
――今日のアルディーナは、襟に金糸と真珠をふんだんにあしらい、袖や裾は軽やかなフリルで膨らみを持たせ、春を先取った淡いピンクのドレスを身に纏っている。華奢な肩には白い蝶の刺繍を施した絹のショールを羽織り、留め具にはスノードロップのブローチ。さらに艶のある黒髪には、結婚前にイジーから買ってもらったお気に入りの髪飾りがある。
仲の良い侍女によるプロの技で装った姫君は、まるで春の妖精のような可憐さである。
そんな装いのアルディーナが執務室に入った時、イジーは真ん中の大きなソファに座って書類に目を通していた。部屋には彼以外誰もいない。ティータイムのことは朝餐の際に告げていたが、仕事人間なのは相変わらずである。
苦笑しながら一歩進み出る。
「イジー様」
名前を呼ぶと彼はアルディーナにようやく気づいたらしく、書類を片づけて妻を迎える。
暖炉のある部屋なので暖かくなっている。ショールを外しても過ごしやすそうだと思い、傍に控える自分付きの侍女にショールを預けてイジーの隣に腰を下ろす。
その後すぐにメイドがワゴンと共に入室し、お茶の準備を始めた。次第にアールグレイの芳しい香りが漂う。
夫と会話をしつつ、静かに準備を進めていくメイドにアルディーナが声をかけた。
「あ、そちらはわたしが」
「かしこまりました」
ソファから一旦立ち上がったアルディーナは、メイドから箱を受け取る。再び座り直して、イジーの前にそれを差し出した。
「イジー様、こちらどうぞ召し上がってください」
「?」
「バレンタインですので、作ってみました」
あえて中身を教えない彼女を不思議に思いながら、イジーは箱をゆっくり開けていく。
箱に入っていたのは、直径12センチ程のザッハトルテ。チョコレートでコーティングされた表面には金箔がわずかに散っている。
「厨房の方に教えてもらいながら一緒に作ったんですよ」
「そうなのか」
少しばかり驚いているらしい夫の様子に、アルディーナは満足そうに口元を緩ませた。
様子見していたメイドがケーキカット用の包丁とお皿、そして湯気の立つティーカップを2人の前に置き、その後は壁際に寄り添って控える。
イジー自らがザッハトルテを切り分け、一口分を口に運ぶ一連の流れをアルディーナは緊張した面持ちで見つめた。
「……」
じっと見られながら彼は咀嚼して飲み込む。次第にアルディーナの表情は不安そうになっていく。
「いかがですか……?」
「うまい」
「本当ですか? よかったです!」
これ以上にない程に簡潔で短い言葉だが、それによって彼女は安堵の表情を全面に出した。
甘いものはあまり得意ではないイジーに合わせて、パティシエ達と考えて行き着いたのがザッハトルテだった。その成果は上々。後で厨房の皆に報告しに行かなければ、と笑みを深める。
あれこれ悩みながら作ったアルディーナも安心してフォークを手に取り、さっぱりとしたクリームを添えて濃厚なチョコレートケーキをほおばる。
甘さが抑えており、口の中で広がってゆく。何度も練習した甲斐があった、と実感する。
早々に一切れを食べ終えたイジーは妻に尋ねる。
「最近忙しそうにしていたのは、これが理由だったんだな」
「イジー様に内緒にしたくて、皆さんにお願いしていたんです」
「楽しかったか?」
「はい! 皆さん良くしてくださって……」
「そうか」
イジーは相槌を打ちつつ、控えている侍女にちらりと目配せをする。すぐ傍にいるメイドもそれに気づき、仲の良い夫婦を失礼にならない程度に一瞥し、ワゴンはそのままに音もなく出て行った。
これでまた夫婦の仲睦まじさの評判が王宮中に広まることになるだろう。
しばらくは夫婦水入らずの時間になり、一息食してソファにもたれた。同時にアルディーナは夫の肩にしなだれかかる。それに応えるようにイジーは妻の髪を梳き、彼女は素直にそれを受け止めた。
「また何かお作りしましょうか?」
「ああ……」
らしくない曖昧な返事に首を傾けて覗き込むと、イジーの視線が絡む。どこか甘い視線がアルディーナを絡め取る。彼女は、甘い雰囲気が訪れたことを肌で感じ取った。
イジーは彼女の薄い瞼に口づけ、次に武骨な指で頬を撫でた。チョコレートよりも甘いキスが薄紅の唇に降る。うなじや耳の裏側を撫でられて生まれる甘い痺れにアルディーナは体を震わせた。
「……っふ、」
唇を解放されたアルディーナが息を整えている間にイジーが生真面目な表情で囁く。
「もうこれ以上何も望まないな」
幸せの定義の範囲が狭い夫らしい、と思いながら愛らしい微笑みを見せた。

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去年バレンタインSS書いてなかったので今年は!と思って書きました。
そしてほのぼのカップルでバレンタイン。
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