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夏色ロマンス - 07/24 Thu

trackback (0) | comment (1) | イジー×アルディーナSS
お題サイト様:because
choice180:夏色ロマンス

イジー×アルディーナ(婚約時代)
国の設定に捏造あり
 
(自称)イジーの親友であり、リージェク公国の外交官であるラースが非公式にガルニアの王宮を訪れたのは30分前のこと。
久々の再会ということで挨拶と社交辞令から始まって近況報告へ移り、いつもよりさらに仏頂面なイジーを隣に、アルディーナは和やかに談笑していた。しばらくして焦れたイジーが来訪の目的を問うと、そこでようやく用件を思い出したようにラースが話した内容は、彼女の興味をそそるものだった。
「ああ、そうだ。今度我が国で舞踏会があるのですが、姫君はご参加されますか?」
「公国の、ですか……?」
「ええ。うちの公子が近隣諸国の王族貴族を招待しようと現在考えているのですよ」
(舞踏会……!)
その単語を反芻したアルディーナは次第に瞳を輝かせる。
つい先程まではこの場にカテルジナも一緒にいてお茶を飲んでいたのだが、苦手なラースの訪問を知るや否や、彼女はそそくさと場を後にした。それもあり、アルディーナの正体を知らぬ者がいない今、彼は男装姿の姫君に自国で開催予定の舞踏会の話を振ったのだった。
しかし、隣で物言わず眉間に皺を寄せている婚約者に気づいたアルディーナが、おずおずと尋ねる。
「イジー様……お嫌ですか?」
「……以前のような仮面舞踏会でないのであれば、見世物になるだろう」
イジーの言う見世物とは、政略結婚が決まった王子と姫が揃って出席することで否応なしに集まってしまう注目を指しているのは間違いない。
彼が以前参加した武闘大会でも明かした、見世物になるのは得意でないという言葉も記憶に新しい。
だから、漏らす言葉は決して怒っているのではないことをアルディーナも、彼の友人もきちんと理解している。
ただ、そう口にする本当の理由を分かってるのは友人だけだったのだが。
「でも、わたし、今度こそイジー様と踊りたいです……」
控えめながらも主張する彼女に、イジーははっとする。確かに仮面舞踏会の終わり際に『また今度』と約束したのを覚えている。
「ほら、姫君もこう仰ってるわけだし! ちゃーんと招待状を手配するよ!」
ラースがアルディーナをフォローし、結果イジーが折れた。
アルディーナが手放しに喜んだのはそのすぐ後のことだった。

リージェク公国は大海に面していることから近隣諸国との交易を積極的に進めており、港を入口に様々な文化や習慣が入り交じる活気溢れた国である。
そんな国が主催する舞踏会もそれらを表すように、にぎやかで豪華絢爛、異国情緒な雰囲気に満ちている。
あちこちに飾られた色鮮やかな花が映える大理石の白亜の宮殿には、ラースが告げた通り、他国の王族や貴族が多く招待されている。
「……今回は顔を隠さないから、おそらく上品な舞踏会だろう。だが、前みたいにはぐれないようにな」
「はいっ」
歯切れよく答えるアルディーナは、もちろん姫君の正装である。
夏らしく爽やかな淡いブルーを基調としたドレスは、胸元に真珠をいくつもあしらい、膨らみを持たせた裾には銀糸で大輪の薔薇の刺繍が施され、上品な印象である。
パフスリーブの袖は、二の腕辺りから透け感のある素材の袖に切り替わり、動きを出している。細いウエストをドレスよりも濃い青の帯で絞め、後ろでリボンを結んでいる。
そして髪飾りとして、ドレスのデザインと揃いになるよう、小さな白薔薇を一輪添えた。
一方イジーは、アルディーナと合わせて濃いネイビーを基調とした正装である。彼は装飾にこだわりを持つどころか煩わしいと思うので、襟や袖に引いた白のライン以外は余計な飾りを施さずにシンプルな装いなのだ。
髪を結ぶリボンの色を服と揃いにしたのは、アルディーナの乙女心からの案だった。

舞踏会のメイン会場である大広間に一歩踏み入れると、イジーとアルディーナに気づいた人々がざわめく。
来夏に政略結婚が予定されている2人が仲睦まじく入ってきたのだから、今シーズンの社交界で注目の的になるのは無理もない。
リージェク公国では、アルディーナは絶世の美女という噂が流布している。以前ラースが噂について話していたことを思い出したアルディーナは萎縮した。自分が平凡な容姿であることは十分理解しているので、侍女に頼んで無理のない範囲で化粧を頑張ってもらったのだが、周囲の反応からしてやはり噂とのギャップは埋まらなかったようだ。
だが、噂は所詮噂だということが分かる絶好の機会だとも思っているので、アルディーナはあまり気にしないように顔を上げた。
幸いにも入場したタイミングで公子による開会の挨拶が始まったので、人々の様々な種類の声がアルディーナの耳に届くことはなかった。
派手好きな公子が配慮したもてなしや楽隊の演奏などの賑やかな催しは、自国の王宮主催の優雅なパーティーにしか出席しない彼女を楽しませた。
パーティーと言えば知り合いへの挨拶回りも兼ねている。2人ともそれを一通り終えた頃、見計らったかのように楽隊の奏でる曲調がダンスのものへと変わった。
曲を耳にしたアルディーナが期待を込めた眼差しを隣にいるイジーに向けると、視線に気づいた彼がそっとエスコートをし、ダンスの輪の中へアルディーナを連れ出した。
姫君教育としてダンスを仕込まれているアルディーナはもちろん、王子であるイジーもまたゆったりとした曲調に合わせてそつなくステップを踏んでいく。
腰に添えられたイジーの大きな掌や導いていく力強いリード、そして距離の近さに、緊張しながらもアルディーナの鼓動は高まっていくばかりで、頬を淡く染める。
たまにイジーがアルディーナをくるりと回転させると、彼女は驚いた後に綻ぶような微笑みを彼に返し、彼もわずかに口角を上げた。
端から見れば政略結婚させられる2人とは思えないほどの幸せそうな様子に、周囲の招待客達は驚愕し、目を剥いた。

続けて2曲を踊り終えたイジーが、満足そうな表情を浮かべるアルディーナを見遣り提案した。
「……外の空気を吸ってくるが、どうする?」
「ご一緒します」
大広間からバルコニーに出ると、夏らしい熱気のこもった夜風が吹いていた。かすかに潮のにおいが漂っている。
「ふふ」
イジーは手摺りを背に佇む。すると、アルディーナが不意に笑った。
「アル?」
「わたし、イジー様と踊れてよかったです。ありがとうございました」
「……そうか」
楽しそうな様子は目に見えて明らかだったので、イジーはほっとした。
そうして夜景を眺めているアルディーナの横顔を見つめる。いつもはほとんどしない化粧を施されたことで少女の面影が今宵はなく、ただ1人の美しい姫君として隣に立っている。
大広間で踊っている間も、兼ね備えている優雅さと気品から、単なる好奇心の類いではない周囲からの視線を集めていたことに、彼女は全くと言っていいほど気づいていなかった。
婚約を交わし、来夏には式も挙げる。接触にはぎこちないながらも、全幅の信頼を寄せてくれている。
なのに、時折不安になってしまうことがある。アルディーナに、ではない。彼女の意思を尊重したいと第一に考えているにもかかわらず、腕の中にずっと閉じ込めたくなる自分に、だ。
昔から自他共に認めるほど何にも執着しない性格で、アルディーナに出会うまでは、こんな風な強い感情を抱いたことなどまるでなかったのに――
「……攫いたくなるな」
「え……?」
内心で思い浮かんだ言葉のはずだったが、アルディーナが顔をこちらに向けたことで、うっかり口に出してしまったことにイジーは初めて気づく。
直後に目を伏せた彼女の頬が、施した頬紅よりもさらに赤く染まるのが見て取れた。
動揺しているイジーは何も続けることができず、2人の間に沈黙が流れる。
「……あの……」
長いようで短い沈黙を先に破ったのはアルディーナの方だった。
珍しく身じろぎしたイジーに、アルディーナは驚いて目を瞠り、だが次の瞬間柔らかく微笑んだのだ。
「……もうとっくに攫われてますよ」
頬を赤らめながら洩らした言葉に、今度はイジーが驚く番だった。それと同時に照れた彼は思わず手で口元を覆う。
「そう、か」
面食らったイジーの様子に、アルディーナもつられて照れ笑いを顔に浮かべて、「はい」と返した。
彼女のそれはどこか恥じらいと嬉しさを合わせたような笑みで。
瞬間的にイジーは抱き寄せたい衝動に駆られたが、数日にわたって避けられてしまうのは目に見えている。けれどこの雰囲気に呑まれてくれないだろうか、と内心密かに期待しながら、彼は自分を抑えて苦笑を零した。

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「攫いたくなる」という言葉のために書いたお話です。
お題は後付けですが、ロマンスが少ないですね……
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comment

はじめまして‼ : あめ @kHmSEWWs
いつも楽しく読ませて頂いています‼私はイジー様とアルの関係性が大好きなので原作では読めなかった関わり合いが読めてとっても幸せでにやつきながら読んでいます‼私も同じ様な妄想してるので文章にして頂いた時は同じ考えの方がいると分かり本当に嬉しかったですo(`ω´ )o
新作はまだですか⁈楽しみにしてます(笑)
2014/10/13 Mon 23:10:22 URL

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