幸せな音

【ひみつの姫君うわさの王子】【狼陛下の花嫁】二次創作サイト。2012/1/12/開設



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それすら愛しい :: 2016/01/12(Tue)

お題サイト様:確かに恋だった
選択式1610:それすら愛しい

黎翔×夕鈴(新婚夫婦)
サイト4周年記念SS

 
大粒の雪がほとほとと降りしきり、瞬く間に後宮は一面の銀世界と化した。
妃として正式な形を経て後宮入りした夕鈴が初めて迎える冬は、思わず震えるほど寒い。
元々人気が少ない後宮ということもあるが、雪に包まれた辺りの静けさは一際顕著である。
大事な妃に風邪を引かせてはならないと、火鉢がいくつか置かれており、部屋全体が暖かい。
そんな暖かい部屋で夕鈴は1人、夫の帰りを健気に待っていた。

黎翔がその日の政務を全て終えたのは、いつもより遅い夜だった。
「ただいま、夕鈴」
「お帰りなさいませ、陛下」
部屋の入り口でにこやかに出迎える。黎翔の顔を見て疲れが滲んでいるな、と思っていたら途端に抱きしめられた。
「わっ」
背中を両手で抱き寄せられ、黎翔の腕にすっぽり収まる格好になる。
「へ、陛下……!」
「遅くなってごめんね」
そう言って、また力強くぎゅっとされる。
こうして出迎えの度に抱きしめられるのは初めてではない。むしろ毎日のことである。
それにもかかわらず、鼓動は逸るばかりで、未だにこの状況が現実だということに慣れない。
時折、夢なのかもしれないと不安に駆られる瞬間もあるほどに。
(この人は、遠慮がなくなってきてる……)
夕鈴はふと思う。想いが通じるまでは、多少強引なところはあってもやはり遠慮がどこかしらあった。
それが両想いになったら、人前でなくても触れる回数が段違いに増えた。
夢ではないのだと、触れることで思わせているような気さえする。
檻の中の生活中、老師から渡された本のせいで夫婦のあり方云々についての知識が否応なしに増え、触れられる度に緊張してしまう。
本当に嫌だと思うことはされないので触れられても安心していいと思うが、黎翔が漂わせる色気を意識してしまって硬直するのは仕方ない。
「……夕鈴」
物思いに耽っていると、黎翔が抱きしめていた夕鈴を一旦引き離し、艶を潜めた瞳で捕らえるように夕鈴を見つめた。
(――あ、)
口づけの間合いを感じ取り、自然と目を伏せて待つ。
しかし、自分の頬に触れた指先の冷たさに、夕鈴ははっとした。
「陛下っ! 手がすごく冷えてますよ!」
「え」
甘い空気を破った夕鈴は黎翔の手を引き寄せ、指先から移る体温の低さを感じようと、ぎゅっと握りしめる。そして得心した。
「ほら、やっぱり。外を歩いて来られるからですね。今日は特に冷えていますし……」
すぐさま黎翔の両手を自分の手で包んでさすり始めた。少しでも自分の体温が移るように。
ただ、甘やかな視線で捉えられて恥ずかしかった気持ちを見透かされないように誤魔化した、という意味もある。

しばらくその様子を眺めていた黎翔は、甘い空気を中断させた夕鈴に対して思案する。
(……焦らすの上手だよね。しかも計算じゃないんだ、この天然兎は)
困ったように漏らした吐息は、一生懸命に手をさする夕鈴の耳には届かなかった。
暖めてくれようとする優しさを享受しながら、黎翔は、まじめに尽くす妻に近寄り、不意を突いて頬に唇を寄せた。
突然の口づけでびくりと肩を跳ねさせた夕鈴を初々しく感じながら唇を離す。
「……好きだよ」
夕鈴の傍にいることで、絶えず胸いっぱいに広がる感情を素直に口にする。
すると恥ずかしそうに頬を淡く染め、「私も好きです」と微笑む姿が眩いと同時に愛おしさが増した。
「何をしても可愛いなぁ、夕鈴は」

その一言で、暖めてあげたい本人よりも体温が急上昇した夕鈴であった。

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サイト4周年を迎えました。
そしてこのSSが偶然にも、夫婦50作品目(R18除く)でした。
読んでくださる皆様、いつもありがとうございます。
ささいなことも愛おしくなる夫婦だと思います。
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